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2019年 02月 06日
Youtubeでリバイバル系音源が激増、広告収益&定額制へ誘導か
ふと気がつくと、Youtube上のリバイバル系ニューオリンズジャズの音源(音声つき静止画)が、大幅に増加していました。かなりの数の現在販売中のアルバムが、自動生成のプレイリストの形式で、丸ごとアップロードされています。とくに、(モグリの個人ではなく)リバイバル系の総本山であるJazzologyレコード(American Music、GHBほか傘下レーベル含む)の公式らしき音源が出始めたのが衝撃的です。過去50年にわたってリバイバル系の音源の過半数を販売してきた最大手が、手持ちの音源を突然無料で公開し始めたようです。
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例えば以下のような調子です。(いずれもYoutubeへの直接リンクです)
ジョージ・ルイス - トピック ←フリージャズのジョージ・ルイス(tb)さんが結構紛れ込んでますが笑
ルイス・ネルソン・ドリール - トピック ←ドリール(Delisle)はBig Eye Nelson (cl)のほうなので表題が誤り

Jazzologyの音源をアップロードしているのはThe Orchard Enterprisesとなっています(ソニー傘下の会社らしい)。どうやらJazzologyその他幾つかのレコード会社は、(ファンの高齢化と未発表音源の枯渇で低迷していたであろう)CDやダウンロードによる音源販売に半ば見切りをつけて、このような配信会社?に配信を委託することで収益を得る試みを始めているようです。おそらく、動画再生時に出てくる広告(現状出てきませんが)か、あるいは、広告無し&オフライン再生可能が売りの定額有料配信(Youtube Music=米では2015年、日本では2018年11月に開始)から配信会社が収益を得て、レコード会社に還元する仕組みと思われます。Youtube Musicはオフライン再生が通信データ量の節約になるので、スマホの人にはそれなりに需要があるのかもしれません。しかし自宅パソコンやwifiのように、通信データ量消費の心配がない環境であれば、これらの音源が無料で無制限に聴ける状態になっています。これは凄い。

アップロード日は2014年ぐらいから始まっていますが、気がつきませんでした。公式の告知はJazzologyのサイトでも見当たりません。アップロードされているのはJazzologyが保有する音源のうちかなり高い割合のようです。定番ないし古典というべき重要な音源(主にAmerican Music Records名義の、こういう↓オレンジ色のラベルのもの)も多く含まれており、充実ぶりは目を見張るものがあります。


残念なのは、各楽曲の動画につけられた情報がリーダー名またはバンド名とアルバム名のみであって、ジャズで重要であるメンバー名(サイドマン名)のクレジットがほぼ皆無であり、検索性が悪いことです。無料のものにそこまで期待するのは酷なのでしょう。ひと手間かかりますが、各動画につけられているアルバム名でGoogle検索すれば大抵Discogsとかの情報が出てきます。もっと言えば、Jazzologyのサイトで任意の演奏者名(サイドマン名でもOK!)で検索してアルバム名を調べ、出てきたアルバム名でYoutubeを検索すれば、かなりの確率で音源がフルに聴けてしまいます。うへえ、こんなこと出来ちゃっていいの?自分はつい去年までJazzologyからCDやダウンロード音源を買ってたのに、なにか変な夢でも見ている気分です。

そして他のレコード会社にも同様の動きがあるようです。(いずれもYoutubeへの直接リンクです)
[Atlantic]
[Riverside]
[Mardi Gras Records]
[Smoky Mary] (Mardi Gras Records名義)

その結果、リバイバル系ニューオリンズジャズの重要な音源のシリーズのうち、現時点でYoutubeに公式音源が出ていないのは既に少数派となっており、もはやBiographレコードのCenterシリーズの一部と、RiversideレコードのNew Orleans The Living Legendsシリーズの一部、Smoky Maryレコードの一部、それにデンマークのStoryvilleレコードぐらいかという状況です。

そもそもリバイバル系の黄金期である1950-70年代ぐらいの録音については、著作物の保護から利用へと転換する時期が早晩来るものではありますが、インターネット(とりわけYoutube)によって生じた音楽産業構造の変化がそれを一瞬で追い越してしまった感があります。これだけの名盤が(自宅限定とはいえ)全部無料で聴けてしまう現実は、リスナーとしても演奏者としても歓迎すべきことなのでしょうが、レコード産業の断末魔の様相にも見えて痛ましくもあります。

それと、音源と標題だけでクレジットもライナーノートもない現状はいかにも「野ざらし」というか、情報不足と情緒不足が顕著であり、各音源の歴史的意義、録音に至った経緯、録音時の情景、製作者の情熱、演奏者の人柄や当時のシーンの熱気が伝わらず、米国の至宝であったはずの音源の価値を風化させてしまいかねない印象です。かといってライナーノートを読むためだけにCDを買うかというと、それも中々難しい気がします(スカスカのライナーノートも多々あるし)。となると各レコード会社さんは、保有する全音源のアルバムのライナーノートを1冊にまとめた電子書籍でも作り、Youtubeの音源動画からリンクをつけて10ドルぐらいで販売したら多少稼げるだろうにと思いました。美術館だって有料音声ガイド端末(あれ結構いいですよねー)で小銭を稼いでいるご時勢、コンテンツ数が増大した局面で求められるのは、専門家ないし目利きによるガイドなりキュレーションだと思います。


by jazzboilers | 2019-02-06 18:01 | ディスクレビュー


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